院長ストーリー② 鍼は東洋医学ではない!?
鍼灸師を目指すための3年間はあっという間に過ぎていきました。
鍼灸の勉強は思った以上に大変で恐らく今までの人生の中で一番、勉強に時間を費やしたと思います。
そして国家試験に合格し、晴れて鍼灸師の仲間入りを果たしました。
しかし鍼灸師の資格を取っても、まだ右も左も分かりません。
どこかでさらに勉強をしなくてはいけないと思い私は卒業した学校に残り、研修生として勉強することにしました。
私が通っていた学校には卒業生が研修生として学校付属の先生の指示のもとで実際に患者さんを施術することができる鍼灸施術所があり、そこで一人の先生に出会いました。
その先生は患者さんからも慕われていて腕も良く人格者でしたが、たった1つだけ気になることがありました。
それは「鍼は科学である。」という先生の言葉です。
私の中で「鍼は東洋の神秘であり、科学では解明できないもの。」というイメージがありました。科学的な根拠はないが様々な可能性を秘めている、私は鍼灸はそのようなものだと思って3年間勉強をして鍼灸師になったのです。
ところが、その先生は「東洋医学は根拠がないし、気(東洋医学でいう目には見えないエネルギー)なんてあるわけがない。」「鍼は触って痛みが出る反応点に刺せば良い。ツボを取るよりも筋肉や神経の走行を考えるんだ。」と言い、東洋医学を否定していました。
その時の私は国家資格を取ったとはいえ、まだ鍼灸のことを詳しく知らなかった為「今は時代も変わったしそういうものなのかもしれないなぁ・・・」と思いその先生のもとで勉強に励んでいました。
そんな、ある日のことです。
その先生は患者さんを診ることもなく、その場で帰してしまいました。
「どうしたのですか?」と尋ねると「風邪を引いてて熱があるから鍼はやらない方が良いと言って帰ってもらった。」と返ってきました。
「え、鍼って風邪にも効くって聞きましたけど・・・」と言ったとたんに今度は「馬鹿、鍼で風邪が治るか!現代医学でも治せないものは鍼では治せやしないだろう。」と言われてしまいました。
その後、さんざん東洋医学を否定した話を聞かされ、私が思っていた「鍼灸は現代医学でも難しい症状が治る可能性を秘めている。」という考えを打ち砕かれました。
「これでは、なんのために鍼灸師になったのか?」「これまでの3年間は無駄だったのか?」
そんなことが頭の中をグルグルと駆け巡っていました。